【ブックレビュー】マーケット感覚を身につけよう ちきりん
参考になった ★★★★☆
読みやすさ ★★★★★
おすすめの読者
・「マーケット感覚」=「売れるものに気が付く能力」「価値を認識する能力」を
身につけることで、これから身につけるべきスキルの方向性、自身が今もっているスキルをどう活かしていくかを考えられるようになりたい人
書いてあることは最もだと思うけど、実践して成果が出せる(いくつも専門性を身につけて複数の分野で活躍するとか)かというと、かなりの行動力が求められる気がする^^;
・・・以下、(一応)本のまとめですが、うまくまとめられず長文になってしまいました・・・
<概要>
例えば、同じスキルを持っている専業主婦でも、マーケット感覚の有無によって稼げる額に大幅に差がでてしまう。
マーケット感覚がある人:
家事で身につけたスキル(キャラ弁の作り方動画でヒットする、収納術を売り出す)を活かして一般社員以上に稼ぐ
マーケット感覚がない人:
パートやアルバイト探しで苦労する
マーケット感覚は、商売人だけに必要なものではなく、学生や主婦、社会人といったすべての人の生き方や働き方に関わってくる能力である。
本書では、マーケット感覚の重要性とそれを身につける具体的な方法を提示している。
■マーケット感覚と論理思考
マーケット感覚ともう一つ、論理的思考力があれば、多くの問題が解決できる。
例)ANAの競合は誰ですか?という問いに対して、
~論理的思考(事業を分解してそれぞれの競合を考える)~
・国際線 :JAL、海外大手航空会社
・旅客 :電車やバス
・貨物 :トラック
・ホテル :AirBnB
~マーケット感覚(リアルな現場をイメージして考える)~
・コロナ禍で海外渡航が制限されている中では、テレビ会議やネット面接が当たり前になっている→これらのサービスを提供する通信業もANAの競合だ!
■マーケット(市場)で取引されるものは何か?
・不特定多数の書いて(需要者)と不特定多数の売り手(供給者)が、
・お互いのニーズを充たしてくれる相手とマッチングされ、
・価値を交換する場所
→取引されているのは、モノの「価値」である。
例)ジャパネットたかたが売っている「価値」は、
「(ターゲット顧客のニーズや懐具合を把握したうえでぴったりの商品を紹介していることにより生まれる)この会社が勧める商品なら間違いない!」という信頼感。
+「(選ぶのが嫌いな人にとっては)選んでもらうという価値」。
■ANAの例で考えると、ANAが提供する「価値」を論理的に分解できれば、マーケット感覚を用いたときと同等の発送ができる。
例)ANAの国際線が提供する価値
(価値) (競合となりえる事業)
・現地の人と会って話す → ウェブ会議
・現地でものを調達する → 通販、現地の人が中継しながら買い物するサービス
・現場を調査する → 海外支店を持つ調査会社
■インターネットの普及とグローバル化で市場の統合と再構築が行われている
例1)
従前:東京の人は「東京で一番おいしい地酒」を求めたが、今では47都道府県の美味しい地酒が手に入る
現状:「東京で一番おいしい地酒」が、47都道府県のうち47位になれば、それを求める人は減ってしまう
例2)
従前:地元で一番賢い子は、地元の優良企業に入社
現状:地元で一番賢い子は、東京大学を目指すか、あるいはそれ以上のレベルを求め海外大学に入学し、海外企業に入社する
■価値は需給のバランスで決まる
例)
・日本には欧米と比べて博士号取得者が少ないとして、博士課程の枠を増やしたが、少子化が進み大学教授の需要が落ちたため、博士でも仕事がない
・日本では人口あたりの弁護士数が欧米に比べて少ないとして、司法試験の合格者数が3倍に引き上げられたが、弁護士への需要は不変なため、弁護士が余り始めている。
■マーケット感覚で変わる世の中の見え方
「これからは英語の時代」と言われてきたが、欧米企業は、人件費が安く英語が通じるインドやフィリピンに拠点を置いて現地スタッフを雇っている。
→つまり、高い費用をかけて英語を勉強するよりも、例えば、人口が増え続け経済が成長しているにも関わらず供給の少ない(知識・スキルを持った人が少ない)インドネシア語やイスラムの習慣などを学んだ方が、市場価値がある。
→アンテナを高くして市場の変化を迅速に感じとり、どう動くべきか自ら判断し行動できるようになることが大切。
■マーケット感覚を鍛える5つの方法
①プライシング能力を身につける
②インセンティブシステムを理解する
③市場に評価される方法を選ぶ
④成功と失敗の関係を理解する
⑤市場性の高い環境に身を置く
①まだ市場で取引されておらず、値札もついてないものの「潜在的な価値」に気づくための、独自の価値基準を手に入れる。
→相場や、コスト積み上げ式(原価+費用+利益)で考えるのでなく、「自分ならいくらで買うか?」「〇〇な立場の人ならいくらで買ってくれそうか?」と考える。
②人間が特定の言動をとったとき、その背景にある要因や、その要因が言動につながるまでの仕組みである「インセンティブシステム」を理解する。そのためには、自分の欲望「あれが欲しい」「こうしたい」に素直になる。そうすることで、市場において求められているものが見えてくる。問題に対して、規則や規制を強化するよりも、インセンティブシステムを活用することで解決できることも多い。
③「組織」と「市場」では意思決定のスタイルが異なる。例えば、旅行雑誌を編集する出版社という「組織(=一部の狭い層)」に選ばれるよりも、ネット上の口コミという「市場(=多種多様な層)」の評価を受けることを目指すべし。
④成功の過程では失敗が欠かせない。失敗がないということは、これまでチャレンジしてきていない、あるいは、成功に必要な学びを得ていないということ。例えば、日本の防災対策が優れているのは、日本が災害大国でそこから学んだことを活かして対策してきたからに他ならない。なにかを学ぶためには「組織(学校や会社の研修)で学ぶ」→「市場で学ぶ」の2ステップが必要になる。組織で学ぶ内容は、社会の変化に追いついていないため、これから学ぶとすれば市場での学び、そこでフィードバックを受けることで、市場で成功するためのヒントを得ることができる
⑤市場性の高い場所とは、需要者と供給者が価値を交換する場所や、人間のインセンティブシステムが直接的に働く場所、組織的な意思決定ではなく、市場的な意思決定がなされる環境。
SNSでいえば、ブログやツイッターは、不特定多数の受信者と発信者がつながる市場性の高いSNSだが、フェイスブックやLINEは、知り合い間での相対取引的なSNS。マーケット感覚を鍛えるには前者で発信していけばいいし、コミュニティ内での付き合いを深めたい場合は後者を活用すべし。
■変わらなければ替えられる
・「どんなに世の中が変わっても自分は変わらない!」と抵抗していても、どこかの段階で淘汰され「替えられて」しまう。
例)日本の一流大学がグローバル改革を進めず変わらないなら、海外の大学に進学先を替える。
☆一生ひとつの専門性でやっていくのは無理。30年続けないと一人前になれないのは、人間国宝が存在するような職人の世界だけであって、10年どころか5年やって一人前の仕事ができないようでは話にならないといった業界の方が多いはず。23歳から65歳まで、3~4つの専門性を身につけるのは難しい話ではない。
☆ひとつの専門性の習得にかける時間についてもあまりに過大な時間や資金を投入してしまうと、ようやく身につけた専門性を守りたいという気持ちが大きくなりすぎ、変化を受け入れ難くなってしまい、結果として時代に遅れてしまう。「専門性を身につけ、かつ、変化する必要がある」のがこれからの時代。
☆ なんの分野であれ、一生使える魔法の杖を手に入れて、それにすがってずっと生きていこうという発想自体がもはや時代遅れ
☆「教育投資」と「学校への支払い」は同じ意味ではない。最近は学校よりも効率的な学びの場も増えている。「学ぶ=学校に行く」という時代ではない。
☆マーケット感覚を身につける最大の利点は、変化が恐くなくなること。
☆変化は恐れるものではなく、楽しむもの
☆特に若い人は、むやみに貯金ばかりしていは、将来に向けて必要な経験が得られません。今年100万円分の貯金が増えたと喜んでいる人は、自分はもしかしてこの1年で100万円分の貴重な経験を逃してしまったのではないかと、振り返ってみるべき。