30代子持ちのキャリアチェンジ記

1991年三重生まれ、金融系SEから転職したい。渋谷区で0&3歳児子育て中。食べることと旅行が生き甲斐

【ブックレビュー】おすすめ!諦める力 為末大

参考になった ★★★★★

読みやすさ  ★★★★★

おすすめの読者 

 ・「頑張る」「努力する」ことにこだわっている人

 ・何かを諦めようか迷っている人

 

数年前にも読んだことのあるこの本。その時も感銘を受けた記憶はある(中身は覚えていないw)のだが、改めて読んでみて、すとんと心に入ってくる部分が多くて、仕事でも日常生活でもこういう姿勢でひとつひとつの出来事と向き合っていきたいな、と思えた。

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<「諦める」の意味>

「諦める」というとネガティブなイメージが強いが、その言葉の語源は「明らめる」。

「諦」という感じには、「あきらかにする」「つまびらかにする」という意味、さらに「さとり」という意味もある。

著者は、「諦める」=「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにしてよく理解し、今、この瞬間にある自分の姿を悟る」ことだという。

 

<目的を達成するための「諦め」>

400mハードルの世界大会メダル保持者の著者は「勝つこと」ことが目的であったので、世界で勝てる見込みのない100mから、より勝ちやすい(=自分の強みを活かしやすい)400mハードルに種目変更した。

目的を達成するためには戦略が必要。戦略とはトレードオフである。100mを諦めた代わりに400mハードルで戦って、そこで勝つことで目的を達成できた。

「人間には変えられないことのほうが多い。だからこそ、変えられないまでも戦えるフィールドを探すことが重要」

自分の目的は何なのか?それを掘り下げていくと、そこに向かう道は無数にある。その中から一つを選ぶ(=その他の道を諦める)。

 

<前向きに「やめる」>

・「せっかくここまでやったんだから、諦めずにがんばろう」というのは、過去を引きずっている。経済学では、今後の投資を決定するときに、サンクコスト(=埋没費用:過去に出した資金のうち、何をしても回収できない資金)は考慮しないのが鉄則だ。やめ時を判断するのは難しく、こればかりは体感値で決めるしかない。自分の中で、成功の確率がxxパーセントまで下がったと感じたらやめる、などの基準を作ってもよいかもしれない。

・何かを続けるときは「もう少しで成功するから、諦めずにがんばろう」と、未来を見据えた努力ができているか、自分に問いかけてみたい。

・やめることで、別の道を選ぶことになり、また別の人生が開ける。

・人間が何かを選択するときに悩むのは、優先順位が決まっていないから。人の期待にこたえるためではなく、自分にとって何が大事なのか、その軸をもって選択を繰り返していくこと。

・やめるのは、自分には合わなかったから。やめることは後ろ向きではない。やり方を修正する(=その手段を諦める代わりに、別の手段を選びなおす)ことで、もっと成長できて、しかも目的を達成できるかもしれない。

・周囲の人は「諦めずにがんばれ」というかもしれないが、それは無責任でもある。諦めずに続けてもなかなか成功しなかった時に、代わりの選択肢を与えてくれるわけでもない。周囲にそういわれたら、「では、諦めずに続けたところで、どこまで成功できると思うか?」と問いかけてみて、その答えが具体的で根拠のあるものでなければ、諦めてみてもよい。

 ・続けること、やめないことも尊いことではあるが、それ自体が目的になってしまうと、自分というかぎりある存在の可能性を狭める結果にもなる。

 

<人間は平等ではない、だからこそ>

・人は平等ではなく、生まれ持った才能というものがある。才能があると自覚している分野では、努力そのものが楽しく、努力を努力と思わない。一方で、自分には才能がないというところから始まる努力は苦しさが伴う。

・人によって努力が喜びに感じられる場所と、苦痛に感じられる場所がある。苦痛の中での努力は「がんばった」という感覚が強くなるが、がんばったという満足感と成果は別物である。

 

<子供の教育>

 ・「何にでもなれる」「何でもできる」という考え方には息苦しさを覚える。何にでもなれる人なんていないが、誰もが何者かになっている。「何者か」になってる自分を認めてあげよう。

・「褒めて伸ばす」という考え方自体は悪くないが、裏を返すと褒められる条件を満たさなかった場合は褒めてもらえないということ。そういう条件づけがなく、放ったらかされて育った方が、褒めるという褒美(≒報酬)を期待せず、純粋に遊びとして物事を楽しむことができる。

・「陸上なんていつやめたっていい」「平凡な人生を」「大それたことをしない」という著者の母の言葉によって、著者は自由に人生の選択を重ねることができたという。

 

<自分にとっての幸福を求める>

・人は、社会的な評価に影響を受けやすい。他人から評価されている状況で、自分の中でなんとなく「違うんじゃないか」と思っていても、自分の感覚を疑ってしまいがち。自分の軸をしっかりもっていれば、他人からの評価でなく、自分を信じて選択することができる。

・手に入れることと手放すことのバランスが大事。仕事も家庭も自分の趣味も…と何もかも諦めない姿勢はどこか悲愴でもある。何かを手に入れるためには何かを手放さないといけない(=トレードオフ)。

・身軽に生きること。著者は定期的に、人間関係の整理、モノの整理、費用の圧縮を行っているという。それにより「これがなくても生きていける」と選択肢を広めることにもなる。生きていくためのサイズを小さくしておけば、やらなければならないことが減っていく。何かをやめることも、何かを変えることも容易になる。

・成功という執着や今という執着から離れる。今が最高で、そこから下がるとマイナスと考えると、現状にしがみついて行動や思考を委縮させてしまう。「たかが仕事」「たかが人生」という気持ちで、人生を全うする。

・人生における「ベストの選択」はなく、あるのは「ベターな選択」だけ。ベターな選択を重ねることで、「これでいいのだ」という納得感が生まれてくる。